シリーズ物作品の5作目をいきなり買う或る大学生の記録

プログラミングの言語解説本を買おうと購買に行った。

一通り書棚を確認して、いや、欲しかった本がないから後でAmazonで買おうと断念し、せっかく購買に来たからと一般書籍の棚も見てみた。

コンピュータ理工学科単科という多いに偏った属性の我が大学の一般書籍のコーナーは、なんと恐ろしいことに幅1メートル、4段の棚のみで、うち3段は数学がどうの物理がどうのとおおよそ純粋に小説作品として読みたい気持ちにならないようなラインナップであった。

そんな書棚にある、お、これは小説だな、と思えるような本。

まあ、こんなに狭いスペースしかないからお察しであるが。よくわからないような洋書ものが十二、三冊。聞いたことあるようなないような日本人作家の聞いたことないタイトルの文庫本が二十冊ほど。果たして彼らはいつからここにいるのだろう。

そうなってくると、なんだか一冊くらい買って読んでみたくなる気持ちがむくむくと湧いてくる。

特に考えもせずに、隙間の目立つ小説の棚の、隙間が目立つ故に微妙に裏表紙が見える一冊を手に取ってみた。

タイトルは「エジプト十字架の謎」。

こんなところにある割にはちょっと面白そうな気がする。私はエジプト、とか十字架とか、そういう言葉にワクワクしてしまうタチである。

本をひっくり返してみてみると、後ろの説明文に〈国名シリーズ〉第五弾、と書いてある。

さて、第五弾ということは第一弾からあるかと思ってしまったが、書棚に並ぶ冊数と、ぞんざいに確認した作家名からして連作の他の本はない。

そして、よくよく値段をみてみると、なんとすれすれ四桁円である。別にいいのだけれど、なんだか文庫本の体裁の本に700円以上出すのはちょっと切ない気分になる。

別に一度手に取ったからと言って必ず買わなきゃならんというわけでもないことは重々承知だが、最近紙の本を読んでいないこともあって、まあ買って読んでみるか、とそのままレジに行き、購買のおねーさんがレジスキャンして「1100円です」というのにちょっとショックを受け(消費税分を忘れていた。余計に切ない気持ちになってしまった)、それでも大人しく万札と100円玉でお支払いをし、すごすごと購買を後にした。

向こうの方は晴れているけれど自分の上には重たい雲がかかっている寒空の下、微妙にポケットのサイズが気にくわないダウンジャケットに手を突っ込んですごすごと家に帰ってきた。

ちなみにこの文章を書いているのはまだ買ってきた本を読む前である。これから読む。

 

以上。